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2022年05月21日

ブロック塀に関する注意点

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長く同じ土地に住むうえで、良好なご近所付き合いは大切なことだと思います。

特に一戸建てにお住いの方は、何かと気を遣うことも多いのではないでしょうか。

ゴミ出しや深夜の騒音、においや煙など、些細なことでご近所さんとの人間関係が

こじれてしまうといったことは避けたいものです。

今回は、そんなご近所さんとの間で実際におこったブロック塀を発端とする

境界トラブルについて、お話をしてみたいと思います。

 

このブロック塀は誰のもの?

ある時、高齢なご夫婦が不動産の売却について相談にいらっしゃいました。

話を聞くと住み慣れた今の自宅を売却し、夫婦で高齢者施設に入居を考えているそうです。

入居する施設は決まっており、売却したお金は入居後の生活資金に充てたいそうです。

お話を伺った後、さっそく謄本を調べ、ご自宅に伺うことになりました。

現地で建物を拝見すると、室内は丁寧に使われていましたが、50年近く住んでいたということで、

さすがに老朽化が激しく、中古戸建として売却するのは難しいように感じました。

そのため、古家付の土地として販売することをご提案し、了承いただけました。

 

その後、一通りの現地調査を進めていたところ、1点気になる問題がでてきました。

それは隣地との境にある古くなったブロック塀でした。売主様にお話を聞くと、

家が建つ前の宅地造成時(昭和40年代)に設置された塀であることが分かりました。

塀は苔が生えて見栄えも悪く、さらには若干傾いており、いつ崩れるか分かりませんでした。

このブロック塀、困ったことに売主様に聞いても所有者がわかりませんでした。

隣地との境界上にあるため、特にどちらの所有かと揉めるようなことなく、

今に至っているそうです。

 

そんな今まで何の問題もなかったブロック塀ですが、不動産を売却するとき障害に

なることがあるのです。

古家付きの土地を購入する方のほとんどは、古い建物を壊し、土地を造成し直します。

そして、土地を囲う古い塀も撤去して、きれいにしてから新しい家の建築を行いたいと

思うことでしょう。

しかし、自分に所有権がない、もしくは他人と共有者している工作物を、共有者の許可を得ずに、

勝手に取り壊しをしてしまうことはできません。

このケースでは仮に購入を検討しているお客様が、ブロック塀を建て替えることができなければ、

その旨ご説明をしなければならなくなります。場合によっては売却価格に影響が出てしまうことも

考えられるのです。

 

民法では

さて、ここで法律を見てみましょう。

実は、民法には隣地との境界について、定められているのです。

 

民法 第229条 (境界標等の共有の推定)

境界線上に設けた境界標、囲障、障壁、溝及び堀は、相隣者の共有に属するものと推定する。

 

いかがでしょうか?これを読んだ方の大半は「おお、民法では境界線上にある塀は共有になるんだ!」

と思われるかもしれません。しかしこれは原則の話をしているのです。

どういうことかと言いますと、「推定する」は「みなす」ではないのです。

「推定する」は反証の余地があるのですが、もし、「みなす」であれば反証ができません。

よって反証できない限り、境界線上に設けた塀は共有物として考えていきます。

逆に考えると、境界線上にある塀を自分の所有だと主張するには「自分の費用でこのブロック塀を

設置しました。ゆえに共有物ではありません」という反証(証明)をする必要があるのです。

 

解決に向けて

さて、相談を受けた土地に話を戻します。当該土地にあるブロック塀は古く見た目も悪く

なっていますが、それ以上の問題として傾いているため倒壊の危険がありました。

地震や強風で倒壊してしまうと、人や建物に被害が及ぶ可能性があります。

なんとしても撤去、そして現在の建築基準法に即した工作物としてやり替える必要がありました。

隣地の方がブロック塀のやり替えを承諾して頂ければ良いのですが、隣地の所有者は

分譲当時購入者した方はすでに亡くなっており、ご子息が不動産を相続されていました。

当然、隣地が建て替えるから共有(?)している塀をやり替える費用を出してください、

といっても承諾してもらえる人はまずいません。

相続したご隣地子息に話を聞いてみると、分譲時の塀の話などは一切聞いてなく、

誰が所有しているか分からないとの認識でした。

 

そこで、解決のためにおこなったのはまずは土地家屋調査士に測量を依頼し、

境界標を明らかにすることからでした。

なお、境界標があるからといって、必ずしもそこが境界点というわけではありません。

ブロック塀の設置工事の際に、境界標が動いている可能性があるのです。

法務局に備えてある地積測量図をもとに、境界標の位置を特定し、隣地の現所有者と

立ち合いをしながら境界確認を行いました。

その後、ブロック塀が境界線上にあることを目視で確認し、お互い所有に関する反証がないか

確認しました。この反証とは、私の費用でして設置しました、ということを証明することなので、

具体的に言うとブロック塀工事の契約書や代金の領収書などが有効になります。

 

双方から反証がなかったので、土地家屋調査士の先生より民法に則りこのブロック塀は

共有物であることが推定される旨、ご説明をしていただきました。

 

この時は、双方の所有者が納得をして、倒壊の危険性も認識していただきました。

そして、今後のトラブルを防ぐためにも、下記取り決めをしました。

 

・現状のブロック塀は、こちら(売却する側の土地所有者)の負担で壊す。

・新しく塀などを設置する場合は、こちら(売却する側の土地所有者)敷地内に設置する。

・新しく塀などの工作物は、現状の建築基準法に即したものを作る。

 

上記取り決めは、売却する側の土地所有者様が一方的に費用負担する形になっていますが、

もともとの話の発端はこちら側にあるので、仕方のない部分はあります。

塀をやり替えることができず、仮に現状のまま放置をしなければいけない、という状況に比べたら

はるかに良い状況だと言えます。

 

売主は、塀の所有者を明らかにし、売却時に新しい所有者にその旨を引き継ぎます。

新しい所有者は、塀を作り替えたかったら、自身の負担で自分たちの敷地内に塀を

設置することになります。

 

この境界線上にある工作物の所有問題は、昭和40年代から50年代に分譲された造成地に

特に多い問題です。当時はブロック塀やよう壁など、境界線上に設置されることが当たり前で、

民間の大手業者だけではなく、公団の造成地でも頻繁に行われてきました。

平成に入ってからはトラブル回避のため、次第に工作物を設置する場合はどちらかの土地だけに

設置されるようになりました。

 

今回の新しい所有者(買主様)に、新しくブロック塀などを設置する場合は、自身の敷地内に、

と依頼するのは将来の新たなトラブルのもとを作らないためでもあるのです。

今回のケースでは、専門家を間に入れて、謄本など公的資料をもとにご説明をしたことにより、

隣地の方からのご理解が得られました。

しかし、本件も初期対応を間違えてしまうと、問題がこじれてしまうことも有り得ることで、

実際、長年にわたって隣地同士で争っているというケースもあります。

 

まとめ

ブロック塀は法務局の謄本に所有者の名前が記載されているわけではなく、

当然塀自体に所有者の名前が書いてあるわけでもありません。

普段生活をするうえでは大きな問題にはなりませんが、土地の売却やブロック塀の老朽化などで、

やり直しが必要になったとき、費用負担や権利の問題が発生いたします。

不動産の売買では、いろいろなトラブルが起こる得るものです。

そんなトラブルを避けるためには、経験豊富な不動産のプロがいる田村商会へまずはご相談ください。

相談は無料で、迅速丁寧に対応いたします。