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2026年09月08日

不動産と相続税対策の注意点

不動産は、現金や預貯金と比較して「相続税評価額」を低く抑えられるため、代表的な相続税対策(節税対策)として広く活用されています。賃貸アパートの建設やマンションの購入、小規模宅地等の特例の利用など、その手法は多岐にわたります。

しかし、単に「税金が安くなるから」という理由だけで安易に不動産対策を行うと、思わぬ落とし穴にハマり、かえって損をしてしまうケースも少なくありません。本記事では、不動産を活用した相続税対策の基本的な仕組みをはじめ、事前に知っておくべきリスクや失敗を防ぐための具体的な注意点をわかりやすく解説します。

なぜ不動産が相続税対策になるのか?節税の基本メカニズム

不動産を活用した節税の根幹にあるのは、「現金と不動産での評価方法の違い」です。

相続税を計算する際、現金や預貯金は「額面通り(100%)」の金額で評価されます。1億円の現金は、そのまま1億円の相続財産として課税対象となります。

一方、不動産の場合は国税庁が定める基準に基づいて評価(路線価や固定資産税評価額)されます。一般的に、土地は公示地価の約8割、建物は建築費用の約5〜6割程度の評価額になるため、現金のまま保有するよりも課税対象額を圧縮することができます。

さらに、その不動産を他人に貸し出す(賃貸アパートやタワーマンションの購入など)ことで「貸家建付地」や「貸家」の評価減が適用され、評価額をさらに3割程度引き下げることが可能となります。

不動産による相続税対策で失敗しやすい「5つの注意点」

節税効果が大きい一方で、不動産を活用した対策には独自の注意点やリスクが存在します。特に押さえておくべき5つのポイントは以下の通りです。

(1)節税効果に目がくらみ「賃貸経営」で赤字になるリスク アパート建設や収益物件の購入によって相続税を抑えられたとしても、その後の賃貸経営がうまくいかなければ本末転倒です。人口減少エリアやニーズの薄い立地で事業を始めると、空室率の上昇や家賃の下落、修繕費用の増加により、収益が悪化してキャッシュフロー(手元資金)が圧迫されます。節税額以上の赤字を出してしまっては意味がありません。

(2)「分けにくさ」による遺産分割トラブル(争族)の発生 現金であれば1円単位で公平に分けることができますが、不動産は物理的に細かく分けることが困難です。特定の相続人が1棟のアパートや自宅を継ぐことになった際、他の相続人に渡せる現金や預貯金が十分にないと、「遺産分割协议」が難航し、親族間でのトラブルに発展するリスクが高まります。

(3)不動産特有の「流動性の低さ(すぐに現金化できない)」 相続税の納付期限は「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」であり、原則として「現金一括納付」です。相続財産の大部分が不動産に偏ってしまうと、納税のための現金が不足し、最悪の場合は不動産を急いで安値で売却せざるを得なくなる事態に陥ります。

(4)過度な節税対策に対する「税務署(国税庁)による否認リスク」 相続直前に駆け込みで高額なタワーマンションを購入したり、極端な節税目的で銀行から巨額の融資を受けて不動産を購入したりした場合、税務署から「過度な節税目的(総則6項の適用)」と判定される可能性があります。否認された場合、特例の適用が認められず、本来の鑑定評価等に基づいた高い税額が再計算されるリスクがあります。

(5)「タワーマンション節税」の税制改正による影響 近年、タワーマンションの高層階における「市場価格と相続税評価額の大きな乖離」を利用した節税手法が流行しましたが、2024年1月の税制改正により評価方法が見直されました。以前ほど極端な評価減は狙えなくなったため、最新の税制に基づいた正確な評価額のシミュレーションが必要です。

不動産相続税対策で失敗しないための「3つのアプローチ」

上述したリスクを回避し、安全かつ効果的な相続税対策を行うためには、次のプロセスを徹底することが重要です。

・事前の「資産全体の試算」と「納税資金の確保」 まずは現在所有しているすべての資産(現金・不動産・有価証券等)を正確に把握し、将来発生する相続税額を試算します。その上で、節税後の税金を現金で支払えるだけの「納税資金」を手元に残す計画を立てることが最優先です。

・実地調査と厳格な収益性シミュレーション 賃貸物件を活用する場合は、単なる節税対策としてではなく「一事業」として捉える必要があります。立地条件、周辺の需給バランス、将来の修繕計画、修繕費用の積み立てなどを厳密にシミュレーションし、事業として成立するかどうかを見極めることが不可欠です。

・遺言書の作成と「分けやすさ」を考慮した対策 不動産を遺す場合は、どの相続人にどの不動産を継がせるのか、現金とのバランスをどう取るのかを事前に考え、遺言書を作成しておくことがトラブル防止につながります。場合によっては、相続発生前に一部の不動産を売却(換価)して現金化しておくことも有効な選択肢です。

まとめ:プロの知見を活用して総合的な相続戦略を

不動産を活用した相続税対策は、正しく活用すれば非常に強力な手段となりますが、税務・法務・不動産経営という複雑な要素が絡み合います。「節税効果」だけに捉われず、「事業の安定性」「遺産分割の円滑さ」「納税資金の確保」という3つの視点をバランスよく考慮することが成功の鍵です。

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